離婚の財産分与において、婚姻期間における夫による夫婦財産の毀損が考慮され、妻側に有利な財産分与がなされた事案

離婚の財産分与において、夫による夫婦財産の毀損が考慮され、妻側に有利な財産分与がなされた事案

依頼者:女性

争点:財産分与

1.相談内容

依頼者の木田さん(仮名)は、夫が実家に帰る形で別居を開始し、離婚協議が始まりました。
木田さん夫妻は共働きであり、財産分与が争点となりましたが、調停でも話がまとまらず、訴訟となりました。妻である木田さん名義の預貯金が約1000万円あるのに対し、夫名義の預貯金はほとんどなかったため、夫から財産分与の支払いを求められました。

また、夫は婚姻期間における生活費(家賃・光熱費等)の半額の支払も財産分与で考慮されるべきと主張し、合計で約1000万円もの支払いを求めてきました。

2.解決内容

私たちは、裁判の中で婚姻期間中の夫の財産棄損行為を主張しました。
夫名義の預貯金の履歴を見ると、別居する数年前までは夫の預貯金は妻の預貯金よりも多額でしたが、夫は仕事を辞めてしまい、ギャンブルにはまってしまったため夫名義の預貯金が減少していることが判明しました。

夫はギャンブルをすることについて木田さんも同意していたこと、預貯金が減少したことはギャンブルのみが理由でない事などを主張しましたが、裁判官は夫による夫婦財産の棄損行為を認めてくれました。
また、婚姻期間中の生活費負担については、夫が任意に行っていたものであるとして、財産分与の際の考慮は認めませんでした。
最終的に、財産分与については、木田さん名義の預貯金が約1000円ありましたが、夫の財産分与請求は認められず、木田さんは財産分与により夫に金銭を支払わずに済みました。

財産分与においては、共働きのケースの場合、夫の収入を生活費に使い、妻の収入を預金していた場合、別居時点において妻の預貯金の方が多く、夫から財産分与を求められることがあります。

財産分与の原則から言えば、妻名義の預貯金も当然財産分与の対象となるので、夫からの支払は認められるのが通常です。

3.ポイント

今回の事案では、元々、夫には多額の預貯金があったにも関わらず、それを勝手に夫婦の生活以外の目的に使ってしまったという事情が重視されたために、夫の財産分与請求は認められませんでしたが、どちらかと言えば珍しい事案と言えます。

また、離婚の際に、生活費を負担してきた夫から、「これまで負担した生活費の半分を支払え」、と言ってくるケースもありますが、生活費の負担については、書面で「生活費は2分の1ずつ負担する」といった明確な取決めがない限り、どちらの名義で負担していても、後からその分を請求することは認められないのが通常です。

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弁護士 鈴木軌士

弁護士。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、離婚の解決実績を多数持つ。不動産分野にも精通しており、離婚に関する不動産問題にも詳しい。事務所には心理カウンセリングが併設されており、法的なケアと精神面のケアを行うことができる。

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