子の引渡を求める

人身保護法の適用(子どもを獲得するための有効な手段)

不当に奪われた人身の自由を回復することを目的に制定された法律のことを指します。

この法律を適用して子供を引き取る事が可能になる場合がございます。この手段は有効ではありますが、裁判所に請求をするということでもありますので、夫婦間での話し合いがまともにできないという場合に適用するべき手段であると考えられます。

適用の仕方としては、子供のことを最優先に考えた場合に、相手方のもとに子供を留めておくと子供に悪影響を及ぼすおそれがあり、一刻も早く子供を引き取る必要がある場合は、直ちに人身保護法を適用されたいという流れとし、地方裁判所に請求するという流れになります。

請求があってから、1週間以内を目処に審問が開かれます。
審問で相手方の行動の違法性が認められると、子供の引渡しを命じる判決が出ます。 もし、相手方が判決に応じない場合は強制執行となります。しかしながら、子供が自分の意思で相手方のもとに行った場合は、親権行使の妨害にはならず、子供の引渡請求権は成立しません。

また、実の親であっても、親権者や監護者の承諾なしに未成年の子供を連れ去れば、刑法224条の未成年者略取、又は誘拐罪になります。 アメリカではだいぶ前から適用されてきましたが、日本でも最近、現実に誘拐罪が適用された例も出てきました。(最高裁判所決定平成17年12月6日)

子供を連れ去られた場合の留意点

①あきらめない!連れ戻すことができることを大前提とする(連れ去られる前の現在の生活が子供に悪影響を与えていると判断されない限り、子供を連れ戻すことができます)
②一刻も早く子供を連れ戻したい場合は、人身保護法の適用を請求する
③子供が自分の意思で相手方のもとに行った場合は、子供の意思が尊重される
④実親でも、未成年の子供を連れ去った場合は犯罪である

人身保護法を使うということに対する考え方

冒頭でも記載させて頂きましたが、人身保護法の適用を使用することは「最後の切り札」となります。

ここまでに至るケースでは、夫婦相当共に感情が高ぶっているため、代理人で関与する場合も未成年者の国選代理人で関与する場合も、本当に薄氷を踏む思いで、立ち会うことになります。

私が関与したケースなどでは、当事者双方共に、子どもに対する愛情はものすごく深い方が多かったように思います。それゆえ、この案件を担当した場合には、両親が話し合ってなんとか解決しないものかといつも考えさせられます。

人身保護法による子の引渡請求が認められるためには、拘束者が被拘束者を拘束しており、当該拘束の違法性が顕著であること、他の方法により相当の期間内に救済の目的を達せられないことが明白であることが必要です。

まだ、離婚には至っていない非監護親が、事実上の監護親から子どもを奪った場合に、人身保護法に基づく請求ができるかということが、問題になっていたという事例もございます。

複雑な事情や背景を理解できる離婚事案の経験豊富な弁護士に相談をして頂くことが最優先であると考えられます。宜しくお願い申し上げます。

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弁護士 鈴木軌士

弁護士。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、離婚の解決実績を多数持つ。不動産分野にも精通しており、離婚に関する不動産問題にも詳しい。事務所には心理カウンセリングが併設されており、法的なケアと精神面のケアを行うことができる。

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